なか土間の家
- 山形市
- 2019年
- 撮影:根岸 功 住宅/土間/なか土間/SOLIDO/アウターリビング/ハンモックネット/ゼロ勾配屋根/高気密高断熱/ペレットストーブ
山形市内の旧街道沿いに計画したコンパクトな住宅である。山形でも市街地エリアに立地するため、冬季の落雪場所の確保が容易でないことや工期的な制約から、外観はシンプルな箱型を基本とした。屋根は北海道でも多くの実績のあるゼロ勾配シート防水屋根とし、1mの積雪荷重に耐える構造としている。
外壁には、遠景として箱型の住宅をひとつのかたまり(マッス)として見せつつも、近景としては、生きた素材感と多様な表情を生むSOLIDO typeM_LAPの鉄黒とした。地方都市の市街地において、従前の街並みに新しい風景を生むことで参加するような建物のあり方を目指した。(地方都市の旧街道筋では建替えに伴う歯抜け状の街並み風景が増えている)。
木造在来工法ではあるが、箱型のプランを生かしてプレカット工場にて壁の大部分を製作する大型パネル工法を初採用した。これは、柱および耐力壁、壁内の充填断熱、窓に加えて、外部付加断熱、外壁下地の透湿防水紙まで工場製作するもので、工期の短縮と雪国では重要となる高い気密性を確保することができる。また、建て方と同時に、ほぼ断熱工事も完了するため、すぐに内装の仕上工事に取り掛かることができる。
内部空間は、かつて日本海側雪国の町屋建築にも見られた『なか土間』形式とし、玄関の土間をキッチン・ダイニング・セカンドリビング(土間テラス)、そして庭へと連続させている。南面に面した土間テラスには間口2間半の大開口を設け、南面の庭への視線の抜けと南北方向に風が建物を通り抜ける計画とした。この「なか土間空間」は外壁のSOLIDOを内部にも連続させ、内外を一体的な空間として計画している。
床レベルは日常生活で許容される20㎜の範囲内でバリアフリーとし、開口部は、雨水の侵入に細心の注意を払い木製サッシメーカー、施工者と共に検討を重ねたディテールとした。
また、セカンドリビングとなる土間テラス内部に吹抜けを設け、縦方向の開放感を創出すると共に、単調になりがちな箱型の空間においても上下階を緩やかにつなぐ効果も与えている。また、この吹き抜け空間は、床下エアコンとペレットストーブの暖気を効率的に家全体に広げる空調空間としても機能する。